2014年9月13日

「PR」とは。

2014年現在、わたしはPR会社で企業広報の支援業務をしています。といっても一体なんのことか、同類の業界や業種の方でない限り、ピンとこないのが普通です。そこでなるべく俯瞰してまとめてみたいと思います。

 


PRの定義

そもそも広報(パブリック・リレーションズ、PR)とは、会社が関わるさまざまなひとや団体(ステークホルダー)に、必要ないしは有益な情報を提供し、適宜フィードバックを得て相互交流しながら、良好な関係と信頼を築く任務です。これに紐づくあらゆる活動は、広義のPR活動と言えるでしょう。


そのうち、企業の広報部が主幹する広報活動は主に、記者発表会や緊急報道対応などのマスコミ(ジャーナリスト、リサーチアナリスト含む)向けの従来のメディア・リレーションズ活動に加え、企業サイトやブログ、SNSなど自社メディア運営を伴う一般層、ユーザー、ファン向けのいわばソーシャルメディア・リレーションズ活動があげられます。よってこのあたりを、狭義のPRと呼ぶこともあります。


広義のPRに含まれるものには他に、使う媒体は前述の狭義のPRと共通しながらも、情報発信の意図や形態が異なる広告宣伝を包含する、いわゆるマーケティング・コミュニケーションズ(マーコム)活動があります。加えて、人事に関する発表を取り扱う社内向けのいわゆるインターナル ・コミュニケーションズ(インターナルコム)もしくはエンプロイー・コミュニケーションズ活動、また財務発表を取り扱う投資家向けのいわゆるインベスター・リレーションズ(IR)活動、監督官庁とのやり取りを行ういわゆるガバメント・リレーションズ活動、その他CSR企業統治(コーポレート・ガバナンス)などの各種コミュニケーション活動も、広義のPRに該当します。


各コミュニケーションの担当部署・要員は、会社や状況により適宜分業するように構成されています。

つまり、いわゆる広報部の業務範囲は、会社の規模、本社所在地( 外資か日系か)などによって変わってきます。小規模企業の場合は、少人数の担当者がコミュニケーション全体を統括し得ますし、大規模となると拠点ごとに広報を設けて主業務(上記、狭義のPR活動を中心とするもの)以外はそれぞれ専門の独立部署が担当したり、広報部のなかでも媒体ごとに担当者を置いたり、組織編成の仕方はまちまちです。

本社が海外にあり国内で上場していない場合は、投資家向けのIRは本国が担当するのが一般的です。


企業が効果的かつ持続的に信頼構築を図るには、適宜分業しながらも、全ての企業コミュニケーション活動を連携させ整合性をもたせることが重要です。


参考:パブリック・リレーションズ相関図

訴求する媒体、ステークホルダーの相関関係


PR会社

こうした企業広報活動を8年経験した後に自身が転職したPR会社は、クライアント企業のコミュニケーション業務支援を行うのが主業です。広報代理店、などとも呼ばれます。

 

PR会社の市場規模は、2013年日本パブリックリレーションズ協会発表によると901億円と言われています。調査の対象となったのは202社とのことですが、個人で広報コンサルタントとして独立されている方などを加えると、その数はそれ以上と考えられます。

   

PR会社の活動は概ね、上記の狭義のPR活動と、マーケティング・コミュニケーションズ(マーコム)や社員向け(インターナルコム)の補佐などが日々の中心となります。

それに加えて、危機発生時のコミュニケーション支援(リスク管理クライシス管理)、スピーカー育成のためのメディアトレーニング報道分析などもよくオーダーのある業務です。

ガバメント・リレーションズ(GR)は、わたしが知る限り、監督官庁の動きと連動したプレスリリースや記者会見など事例としては限定的で、米国のロビイング活動同様の展開はあまり見られません。

とはいえ、PR会社により、主軸や事業割合はまちまちと思われます。

 

<参考>

日本パブリックリレーションズ協会 ニュースリリース 2013年6月18日 

2013年度売上高予想は前年比116%。推計市場規模は901億円。

メディア・レポート 国内PR業の市場規模と業務動向, Journalism & Media No.7 March 2014, 中里好宏 

 


企業広報とPR会社の関係

企業広報を始めて間もない方からよく聞かれるのは、どの時点でPR会社を使ったらいいか、どうやってPR会社を選んだらよいか、といったことです。

まずは、自社のニーズと予算を洗い出すのが何より先決だと思います。いつかは使いたい、という程度でしたら具体的に大きな発表案件やバジェットが見えたときに考えたらよいでしょうし、いろいろなところで悪評が流れているらしいと耳にしたら、危機が発生する前に早急にパートナー(PR会社、あるいは別の第三者かもしれません)選びに動いたほうがよいと思います。

PRに関わるのは始めてだから何をいくらでというのが分からない、という場合は、上述の業界団体の情報などを参照されるとよいと思います。市販のPR手帳は優れた情報源です。

 

企業がPR会社を絞り込むには、業務範囲(自社のニーズにあうか)、得意分野、特定業界の経験値、場所(自社に近いと楽、あるいはテレカンやビデオ会議を柔軟にやってくれるか)などをポイントに見るとよいでしょう。そして実際に問い合わせ、担当メンバーを洗い出して提案や見積もりを出してもらい、この人たちなら一緒に仕事したいと納得できるところにお願いする、というのがだいたいの流れです。

 

PR会社(だけでなくどのパートナーでも)を選定するうえで、組む想定の相手(主担当者およびチーム)と馬が合うかは重要です。各社の会社概要、ホームページなどの一方的な情報と、見積もりだけで決めることなく、実際に会ってチームワークに影響するひととひとの相性を見て判断されるとよいでしょう。信頼できるひとと協力して初めて、対外的な信頼を築けると言えるでしょう。

 

また、依頼業務が単発の比較的単純なものではなく、長期的視点に基づくものであり、業務範囲が変動しうる場合は、目の前の担当チーム以外の連携・協力体制があるかを確認するとよいでしょう。

広報活動において、自社の広範な事業や、国内外にわたる市場、法務、時には特定媒体(TV、専門紙誌など)の露出強化など、さまざまなニーズに応える必要が発生し得ます。その時に対応できる体力やネットワークを持っているPR会社を選んでおくと、困ったときに頼りになると思います。

 

PR会社の仕事は一般に、知恵と人手がいる知的サービス業です。  

前述の市場調査リリースにもあるとおり、そのなかでも広報コンサルティングのニーズは拡大しています。

かくいうわたしも、広報コンサルタントとして、全社的な経営を支える広報戦略を提案できるよう、そして得意とするBtoB(toC含む)分野の経験をさらに拡充できるよう尽力しています。

無論、ひとにより、BtoCに強い、メディア・リレーションズ実務に強い、イベントに強い、方向性はそれぞれ。ただしどんなに優秀な個人がいても、チーム全体が有機的に動けなければ、業務効果は希釈されます。

 

だからこそ我々も、個を磨くだけでなく、適材適所でチームを組んで、プロジェクトに取り組みます。


未来のPRとは

以上、わたし自身の仕事に紐づけてPR、広報部、PR会社の説明およびPR会社選定の視点についてお話ししました。

 

今から20年も経つと、メディアやコミュニケーションの事情や業界、職種は変わるでしょう。

しかしいずれにせよ、企業がステークホルダーと良好な関係を育む必要性は変わらないのではないでしょうか

 

PRにおいて(それが広義でも狭義でも)、企業や組織に即したニュースを生み、認知理解を促進し、リスク管理・対処と連動して、信頼と存在価値を高める、成長を促す、といった要素は本質的なものだと思います。

 

仮に起業家が100年続く会社を作ることを目指すなら、PRコンサルタントとしては100年後にも評価されるコミュニケーション事例を生み出すことを目指したいと考える昨今です。